プロテオグリカン会合体 : 構造と機能
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概要
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軟骨のプロテオグリカン会合体は,ヒアルロン酸,リンク蛋白およびアグリカンの三者から成り,保水作用を通じて軟骨に弾力性を与えている。アグリカンは多数のコンドロイチン硫酸鎖を持つ巨大プロテオグリカンで,コア蛋白質は3つの球状ドメインと2つのグリコサミノグリカン結合ドメインを持つ。N-末端の球状ドメインG1はヒアルロン酸,リンク蛋白の両者と結合し,この三者の結合によって安定な会合体構造が保たれる。アグリカンとリンク蛋白の欠損マウスを用いた研究から,同会合体は軟骨細胞を支持するのみならず軟骨分化に関与するシグナル分子の蓄積と適切な分布を司る機能を持つことが知られている。現在,アグリカンファミリーとリンク蛋白ファミリーのメンバーは各々4分子ずつ同定されており,これらの分子もヒアルロン酸とともに相互作用してプロテオグリカン会合体を形成すると考えられている。アグリカンファミリーのうち,バーシカン/PG-Mは胎生期に一過性に発現して接着,遊走等の細胞の挙動を制御する一方,心血管系と脳では恒常的に発現してマトリックスに沈着する。講演者らは最近,バーシカン/PG-Mとアグリカンとでリンク蛋白との結合様式の差異を見いだした。さらに軟骨においてバーシカン/PG-Mが関節軟骨にプロテオグリカン会合体として存在し,軟骨細胞の分化を抑制して静止期に保っていることを明らかにした。また,心血管系において発現しているリンク蛋白のファミリーメンバーであるhyaluronan and proteoglycan link protein3(HAPLN3)とバーシカン/PG-Mとの結合を検討した。これらの結果は,従来知られている軟骨プロテオグリカン会合体のみならず,種々の組織に同様の会合体が存在し組織特異的な機能を果たしていることを示唆する。本講演では,細胞外マトリックスの主要成分であるプロテオグリカン会合体の構造と機能について述べる。
- 日本結合組織学会の論文
- 2004-06-03
著者
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