エナメルマトリックスタンパクがヒト歯肉由来上皮細胞と上皮系株細胞の細胞周期に与える影響
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概要
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エナメルマトリックスタンパク(EMD)は近年歯周組織再生療法に使用され,良好な臨床成績を挙げている。EMDは,歯周疾患により喪失した歯周組織における新たな線維性付着の形成に深く関与するといわれている。線維性付着を獲得するためには歯肉上皮細胞の深行増殖を抑えることが不可欠であるが,そのメカニズムの詳細は明らかにされていない。本研究の目的は,EMDの上皮細胞の増殖に与える影響とそのメカニズムを明らかにすることである。ヒト歯肉由来上皮細胞(HGK)と上皮系株化細胞(ヒトロ腔由来扁平上皮癌細胞;HSC-2,ヒト唾液腺由来上皮細胞;HSG)を用い,EMDの細胞増殖能に与える影響をBrdUの取込み能で評価したところ,EMDは上皮細胞の増殖を有意に抑制していた。そこでEMDによる細胞増殖抑制が細胞周期のどの段階に作用しているかをフローサイトメトリーで検討した結果,DNA複製準備期(G1期)で作用していることが判明した。さらにG1期での阻害の機序を明らかにするために,G1 arrestに関与する因子の発現や活性化状態をウエスタンブロット法とRT-PCR法を用いて検討した。その結果,EMDによる上皮細胞の増殖抑制は健常歯肉細胞,株化細胞の双方に認められたが,そのメカニズムは異なり,HGKではp27の発現の増強によって,HSC-2ではp21発現の増強やCdk 2の活性化の抑制によって細胞増殖抑制が誘導されることが明らかとなった。
- 特定非営利活動法人日本歯周病学会の論文
- 2001-12-28