実験モデルによる矯正力の解析 : 前歯の口蓋側移動について
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概要
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歯の移動の制御を行うには, 力とモーメントを組合せることが必要である.本研究ではエッジワイズ法による前歯の口蓋側移動の場合における歯体移動について検討するために, シミュレーションモデルを用いて前歯の抵抗中心に生じる力とモーメントを測定した.モデルで歯列弓は黄銅棒により構成されており, 各棒には各歯の抵抗中心相当位置および下方の位置に歪ゲージが貼られている.モデルに矯正装置を装置しアクチヴェートすると, 抵抗中心相当位置に発現する力とモーメントは歪の測定値から算出される.実験結果は以下のとおりである.1. 牽引力はアーチワイヤーのトルクの増加とともに減少する.たとえば, アーチフォーマーの溝角度が16°のトルクの.18″×.25″, .017″×.25″および.016″×.022″のステンレスワイヤーでは, それぞれ当初の値の約44%, 63%, 39%となる.2. 抵抗中心でのモーメントは, アーチワイヤーのトルクを増すと減少し, 牽引力を大きくすると増大する.アーチフォーマーの溝角度が10°のトルクの.018″×.025″, .017″×.025″および.016″×.022″のステンレスワイヤーでは, 歯体移動を実現するために必要な牽引力はそれぞれおよそ344gfから438gf, 438gfから554gfと210gfから344gfの範囲である.3. 実験モデルにおいて前歯に発現する矯正力は歯列内で均一ではない.これはアーチワイヤーとブラケットの間における摩擦の影響と思われる.しかし矯正力の総和の実験結果は力学的に妥当であり, 本測定装置は歯科矯正装置のシミュレータとして有用であると考えられる.