舌下神経運動ニューロンの機能特性と嚥下運動の中枢性パターン発生装置からのシナプス入力
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概要
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前歯部の咬合に影響を与えると考えられる嚥下時の舌運動について, その中枢性パターン発生装置(CPG)による制御機構の一端を明らかにした.非動化した条件下でネコ舌下神経運動ニューロン(Mn)の平均発射間隔と標準偏差の関係を調べた結果, 舌下神経内側枝支配Mn (P-Mn)と外側枝支配Mn (R-Mn)は, それぞれ相動性(kinetic, k) Mnと緊張性(tonic, t)Mnとに分化していることがわかった.つぎに嚥下類似の舌運動を惹起しうる条件で上喉頭神経(SLN)を連続電気刺激することによりkP-Mnには主に興奮性シナプス後電位-抑制性シナプス後電位(EPSP-IPSP)が, tP-Mnには主にIPSPが誘発された.また5%のP-Mnと5%のR-Mnには同刺激により如何なるPSPsも誘発されなかった.さらに, P-Mnに誘発されるIPSPとEPSP-IPSPのIPSP相の持続時間は対側SLN刺激時の方が同側刺激時よりも長いことがわかった.一方, R-Mnに誘発されるEPSPとP-Mnに誘発されるEPSP-IPSPのEPSP相の持続時間に同側と対側SLN刺激で有意差は認められなかった.以上の実験結果から, tR-Mnと一部のkR-Mn, ならびに一部のkP-Mnが興奮することにより, 嚥下時における舌運動の基本的パターンが発現することが示唆された.また, 両側の嚥下運動のCPG間に存在する相反性の抑制性経路は相反性の興奮性経路よりも長く, より多くのシナプスを介することが示唆された.
- 日本矯正歯科学会の論文