脳卒中片麻痺における認知障害 (脳血管障害 : ADL障害における理学療法)
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概要
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私達理学療法士 (以下 PTと略す)が脳卒中片麻痺における認知障害を考えるとき, 半側空間無視などに代表される高次神経機能障害を合併している症例が, 特異的症状を持つゆえに話題となることが多い。しかし中枢神経系の障害としての片麻痺は, 「失認」と呼ばれる高次神経機能としての認知障害ばかりでなく, 運動麻痺, 様々な感覚障害, そして意識活動の障害などに起因する, 身体を含めた空間の認知活動に障害をもっている。動かせない身体を持つことによる能動的活動の減少, 筋緊張の異常による固有感覚受容器の機能低下, 視覚, 聴覚, 触覚などの障害, それに注意, 覚醒障害などは, 環境からの情報を合目的に統合し, 適応行動としての動きを作り出すための認知活動に大きな影響を与えている。例えば日頃の臨床においても, 感覚障害を伴った筋緊張の低い患側の活動性を高めていく時や, 定型的な歩行パターン, 立位および坐位姿勢を修正していく時などにおいて, PTの意図する反応を引き出せない場合, 治療の難しさと共に中枢神経系の統合不全としての片麻痺の持つ認知障害を強く感じる。さらに半側無視を伴った左片麻痺においては, これらの機能障害に高次神経機能障害が混在し複雑な症状を示す場合が多く, 治療に苦慮することが少なくない。今回は, 片麻痺の認知障害を, 治療という私達の働きかけに対する患者さんの反応, そして動きというなかで考えてみたい。
- 1991-05-10
著者
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