医療事故における法律問題(「医療に関する話題」)
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概要
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法律学が科学技術分野の信頼性・安全性を問題にする場合,その専門分野の信頼性・安全性に関する技術的水準や基本的な考え方を基礎とすることは当然である.しかしながら,科学技術専門家と法律専門家の間で信頼性・安全性についての考え方に違いが見られる面もまた多々存在する.このような相違は基本的には,正常に作動する機械システムを前提に,事故の発生を予防し,機械システムの「信頼性」「安全性」を高めようとする科学技術専門家の考え方と,事故の発生を前提とし,発生してしまった個別の事故について「責任」の有無と所在を明らかにすることによって,社会的な公平を実現しようとする法律家の考え方の相違によるものである.もちろん法律家も法的な基準・規制の作成に当たっては,一般的なシステムについて考察するが,その場合でも法律プロパーの専門家の考え方は基準・規制の限界について考える傾向が強い.本稿では,もっぱら医療事故をテーマとして法律専門家がどのように「責任」を考えているかを解説したい.読者の便宜を考え,法律および判例等の引用等は最小限に止めた.また,医学・工学について不適切な用語・表現があるかと思われるが御宥恕願いたい.
- 日本信頼性学会の論文
- 2002-03-25