ラット歯肉炎の実験病理学的研究 : 初期歯肉炎における歯肉上皮の反応について
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概要
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歯肉炎の成立過程を病理組織学的に把握する目的で炎症実験モデルを開発し,炎症に対する歯肉上皮の反応と歯肉溝深化(歯肉ボケット形成)過程との関係を検索した。方法として,Wistar系ラットの両側大唾液腺を摘出して口腟内自浄作用の障害を起させた群(実験群)と,摘出を行わなかった群(対照群)にそれぞれ固型飼料およぴ粉未飼料を与えて,歯周組織に与える影響を経時的に比較観察した。動物は実験開始1週,2週,4週,3カ月,6カ月,9カ月後に居殺し,主として上顎第一臼歯口蓋側歯肉を肉眼的ならぴに病理組織学的に,また組織形態計測,^3H-thymidineによるオートラジオグラフィーなどを用いて観蔡し,以下の結果を得た。1.肉眼的には,実験開始3カ月以降飼料の性状を問わず,対照群と実験群の数例の歯面に付着物が観察された。2.病理組織所見では,固型飼料実験群のみに炎症反応の進行が観察された。つまり,2週目頃より接合上皮直下の固有層に多形核白血球を主体とした滲出性炎が始まり,3カ月日頃よりリンバ球の浸潤が認められるようになり,その範囲は根尖方向へ拡大した。その過程で接合上皮がセメント・エナメル境を越えて深行増殖し,それに伴ない接合上皮内にポケット様の断裂が形成され,それが経時的に拡大するのが観察された。しかし,9カ月目まででは,歯柑骨頂の署しい吸収や歯根膜の変性,破壊は認められなかった。3.組織形態計測によると,固型飼料実験群で,9カ月目頃までに歯内溝底の根尖方向への移動と,またそれに伴なう口腔歯肉溝上皮の根尖方向への増殖が観察された。さらに,接合上皮直下の炎症性変化が強度になると,歯肉ポケット底部を構成する上皮細胞数は減少する傾向にあることがわかった。4.オートラジオグラムの計測結果から,固型飼料実験群で,口腔歯内溝上皮と接合上皮の基底紬胞層において,^3H-thymidineの取り込みの経時的増加の傾向が認められた。とくに,接合上皮下の結合組織に変性や破壊が認められた場合,その傾向は著しかった。これらのことから,接合上皮と口腟歯肉溝上皮の増殖は歯肉ボケット形成につながり,また一方では炎症性の刺激に対するbarrierとして働いていることが示唆された。
- 1987-06-28
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