Tetrapionがイネのカルスの生長と器官分化に及ぼす影響
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概要
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1) Tetrapion(Sodium 2, 2, 3, 3-tetrafluoropropionate, TFP)はイネ科雑草に有効な選択性除草剤である。Tetrapionは土壌に処理されると植物の根部より吸収されて、地上部に容易に移行し、感受性のイネ科雑草に著しい生育抑制作用を現わすことを特徴としている。この生育抑制作用を細胞レベルで追求するために、イネのカルスを培養してそのカルスの生長と器官分化に及ぶすtetrapionの影響をイネの芽ばえの場合と比較して検討した。2) Tetrapionはイネの芽ばえに低濃度で著しい生長阻害を示す。根部より地上部の方が阻害が受け易い。芽ばえの生長50%阻害濃度は地上部では1〜2 mg/l、根部では10 mg/l程度である。これに対しカルスではtetrapionの生長阻害はきわめて少く、1,000 mg/lの高濃度でもカルスの生長に及ぼす影響は僅かであった(Fig. 1, 2, 3, 4, 5)。 3) イネのカノレスから器官を再分化させ、tetrapionの器官分化に及ぼす影響について検討した。Tetrapionはカルスの器官分化の芽の形成には高濃度でも阻害は少なかったが、形成した芽のその後の生長には強い抑制を示した(Table 1)。 4)カルスの生長,器官分化の芽の形成に阻害は少いが、分化した芽の生長が抑制されたことより、tetrapionは細胞の生存、増殖,生長などに関連した細胞のレベルでは大きい影響は与えないが、細胞が集って組織や器官を形成してゆく形態形成の過程で著しい生長阻害を発現してくるものと考えられる。これらの事実はtetrapionが細胞壁などの組織の骨核構造の形成の過程に強く関与し、正常な形態形成を阻害していることを示唆している。
- 日本雑草学会の論文
- 1984-09-27
著者
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