犬の慢性僧帽弁疾患の病理形態学的研究
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概要
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著者が収集した犬の心臓標本306例のなかから僧帽弁線維症の特徴を有する64例の心臓標本の僧帽弁について, 形態学的再検討と詳細な計測を行なった. 形態学的観察の結果, 弁はちょうど"ヨットの帆を張ったような変形"を示し, その病変の好発部位は前尖の後半分と後尖の後交連に隣接する弁のrough zoneであった. 弁および腱索を計測した結果, 弁ではそのrough zoneに過度な伸展が認められ, 腱索ではrough zoneに挿入する腱索に強い伸張が認められた. 一方, 交連部やcleftに挿入する腱索には伸張は認められなかった. 組織学的には, fibrosaにある膠原線維の粘液変性と弁表面の線維性増殖が認められた. そして, 病変の進行とともに多量の酸性粘液多糖類の沈着を認めた. 特に腱索の断裂を伴なった症例では腱索の膠原線維にも粘液変性が認められた. これらの所見から, 本症の本質的病変は膠原線維の変性であり, その結果, 弁の脆弱化が起こって, 特徴的な変化をもたらすものと考えた. これらの特徴はヒトにおける僧帽弁逸脱症候群のそれに酷似し, 比較心形態学上興味深い.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1980-06-25
著者
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