イヌ・ジステンパーに関する病理学的研究 : I. 実験的イヌ・ジステンパー感染フェレットの病理組織学的変化
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概要
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由来が明らかなイヌ・ジステンパー(CD)ウイルス株を用い, 実験的 CD で感染死した36頭, および他の原因で斃死した6頭, 合計42頭のフェレット(F)を材料として, 主として病理組織学的検索を行ない, CD 感染 F における基本的組織変化の大要を明らかにした. 病理組織学的変化のうち, 基本的変化として特記すべきものは, CD 感染 F では, ほとんど全身の排泄管系統および消化管系統の粘膜上皮細胞, 細網内皮系の細胞, および皮膚の胚芽層細胞の細胞質内における好酸性封入体の豊富な出現, 肝の強度の中心性脂肪化と細網内皮系細胞の腫脹増数, 脾およびリンパ性組織のリンパ性細胞の減数萎縮および細網内皮系細胞の腫脹増数, 肺の種々の程度の胞隔炎, 中枢神経系における神経細胞の変性, 皮膚の胚芽層細胞の過形成と角質層増厚および parakeratosis であった. また CD 感染に無関係と思われる異常所見として, ほとんどすべてのFに共通して, 赤色脾髄の骨髄性細胞をまじえた顕著な細胞性過形成, 肺肋膜下の肺胞内に, 脂肪顆粒細胞とコレステリン結晶の出現に伴う巨細胞を含む結節状器質化巣形成が認められた. その他, 剖検所見としては, CD 感染 F では, 肝の混濁腫脹と脂肪化, 脾の濾胞不明瞭化, 皮膚(とくに口唇, 鼻面, 眼瞼, 下腹部および蹠面)の肥厚および湿疹が顕著にみられた. また CD 感染の有無にかかわらず, 全例の F に, 脾の腫大, 肺の背肋膜面の灰白色結節多発がみられた. 稿を終わるにあたり, 病理組織学的検索につき懇篤な指導と校閲とをいただいた東京農工大学宮本教授に深甚な感謝の意を表する. また当検査所, 川島所長に敬意を表し, 種々指導と援助をいただいた信藤業務部長, 藤江室長(当時), 倉田技官および貝塚技宮に深謝する. なお本報告の要旨は, 第53回日本獣医学会(1962年)において講演した.
- 社団法人日本獣医学会の論文
- 1965-04-25
著者
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