住民意識からみた防災環境評価についての一考察
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概要
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防災環境に関して意識指標を中心に種々の分析結果について述べたが, 以上をまとめると主に, つぎの点が指摘される。(1)世帯意識の実態は, 火災に対する不安意識(87%), 震災に対する不安意識(70%)と高率となっており, 最も身近な強く不安を抱く災害であることがわかる。火災に対する不安意識を低減させるためには, 家屋の耐火構造化, 延焼阻止帯の設置, 消防力の強化等が考えられる。また, 避難場所の認知状況は「知っている」と答えた住民は全体の40%程度であり, また, その内, 40%がその位置が「遠い」と指摘しており, 自治体の住民への避難場所に関する積極的な情報活動が必要であると思われる(表2)。(2)表4に示した個人票による地震発生直後の不安意識のうち, 最も高い不安を抱いている項目は, 家族の安否(92%)であり, 殆んどの住民が不安を抱いていることになる。ついで, 火災の延焼の不安(85%), 自宅からの火災発生の不安(71%)となっており, 火災に関する項目に対する不安意識が強い。(3)表5の地震発生後しばらくしてからの不安は, 電気・ガス・水道の切断されることに対する不安が9割と最も高く, ついで, 消火・消防活動(67%), 役所の適切な判断(67%), 救急・救助活動(67%)に対する不安等が7割近くになっている。(4)震災, 火災の危険・不安を感じていると答えた住民は, 表6にみられるように, かなり厳しく総合防災環境を受け取っており, 震災, 火災に対する対策は緊急の課題であろう。(5)個々の意識指標と総合防災環境意識指標間にはそれほど高い相関関係がみられなかったが, 表8に示した複数個の意識指標による分析ではかなり高い重相関係数が得られており, 総合防災環境意識は個々の意識指標を総合的に反映した指標であることがわかる。(6)地区特性指標と総合防災環境意識指標間には表9に示したように, 比較的高い相関関係がみられ, とくに, 4m未満の道路延長割合, 地区規模を表わす街区面積率, 宅地面積率, 世帯密度, 道路面積率等間に強い相関関係がみられた。(7)表10の地区特性指標による要因分析においても, かなり説明力のある結果が得られており, とくに, 建ペイ率, 4m未満の道路延長割合, 防火木造混合割合等の指標がかなり寄与している要因であるといえる。(8)本稿に示した評価式は総合防災環境意識について, 調査9地区を51丁目に加工して作成したものであるが, これらの式を利用して, 他の3地区および4地区に適応した結果はかなり適合性がよく, 十分に防災環境を評価できうる式であるといえる。
- 1984-10-30
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