滞牧による草生変化が音で放牧牛を誘導するときの食餌性条件反応に及ぼす影響
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概要
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滞牧による草生悪化が濃厚飼料の合図として学習させた音に対する牛の移動反応に及ぼす影響を検討した。調査では、音を鳴らしてから牛群の中のいずれかの牛が最初に移動を開始するまでの時間を反応潜時として測定した。調査は二つの試験牧区で5月から10月にかけて58回実施した。家畜体重100kgあたりの草量は、コドラートを用いた刈り取り法による推定草量と毎月の家畜体重から計算した。その結果次の様な知見を得た。1)滞牧日数別平均値でみると、反応潜時は滞牧初期ほど長く、滞牧末期になるほど短かった。2)調査月別平均値でみると、反応潜時は5月、6月および10月の調査で短く、7月8月および9月の調査で長かった。3)反応潜時と草量との関係を滞牧初期、滞牧中期および滞牧末期に分けて検討した結果、滞牧初期では草量が体重100kg当り風乾物で20kgを越えると反応潜時が長くなるという傾向がみられた。しかし、滞牧中期以降はそのような傾向が明瞭でなくなり、とくに草質が悪化する滞牧末期には草量の多少に関係なくほとんどの反応潜時が10秒以内と短かった。4)採食による草の減少割合を利用率とし、反応潜時と利用率の関係を検討した結果、利用率が30%を越えた条件ではほとんどの反応潜時が10秒以内と短かった。以上の結果から、音で牛を誘導するときの反応潜時は、季節的な草量変化のみでなく、滞牧による草質悪化によっても影響されるものと考えられた。日本家畜管理研究会誌、29(2) : 47-53.1993.1993年1月26日受理
- 日本家畜管理学会の論文
- 1993-11-10