電子文書の長期的保管のための枠組(ナレッジ・マネジメントとレコード・マネジメントII : 学問と知識)
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概要
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電子計算機技術やネットワーク技術の長足の進歩の結果、従来なら紙の上に記されていた情報が電子的媒体の上に記されることが多くなり、質・量ともに電子情報の重要性は日々増す一方である。しかしながら、(1)個々の媒体の物理的寿命が必要な水準に足りない、(2)激しい技術革新のため文書を収めたハードウェアや文書が必要とするソフトウェアがすぐに忘れられてしまう、(3)恒久的な使用に耐える命名体系が普及していない、(4)現行の多くの情報システムでは管理者と文書の間の連係が十分ではない、(5)電子情報の信憑性の基礎となるセキュリティの問題が十分解決されていない、等々の多くの技術的問題により、それら重要な電子情報に数十年以上の寿命を求めることは未だ非常に困難である。これらの問題を解決しようとする技術は、単発的には存在しているが、上記の問題の集合を文書の長期保存の問題と捉え、統一的に解決するような枠組は未だ提示されていない。本論文では、このギャップを埋めるための枠組として、著者が修士学位論文で提案したPOT(Persistent On-line Text)を解説する。POTは、諸問題を各層に割り当てる階層モデル、及び文書間の構造や管理者との関係などを定義する文書モデル、文書などのリソースに一意の命名を保証する命名モデルより成り、既存のIT技術の断片を統合する糊の役割を果たすものである。これらのモデルの妥当性は筆者が実装したプロトタイプによって検証済である。続いて、POTの枠組に既存のIT技術がいかに位置付けられるかを具体的に示し、最後にPOTの応用可能性について検討する。
- 記録管理学会の論文
- 2000-11-15