東京に於ける Anopheles に就いて : 第 2 篇形態的觀察
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概要
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Anopheles成虫を捕獲して、それに産卵させ、それを孵化せしめて各齢期の幼虫の観察を行つた。東京産のAnophelesに就いては未だこの様な観察は行われていない様である。成虫の捕獲は、第1篇で述べた富士見池附近の馬小屋、當教室の研究室、人家等で行つた。捕獲の方法は普通に行われる様に大型の試験管を用いた。7月8日から採集を始め、9月12日までに至る間、時々採集に出かけて、合計35匹の雌蚊を得た。このうちA. koreicusは8月31日に1匹を得たのみで、他は総べてA. hyrcanus var. sinensisであつた。これら成虫の飼育はランプのホヤを用いた。その上下の口をガーゼで蓋をし、中には砂糖水又は井戸水を入れて之に産卵せしめる様にした。吸血にはホヤの口を前膊部内側でおさえ、ガーゼ越しに刺穿せしめた。吸血後2日以内に59%、3日以内には80%が産卵を終り、1匹の雌蚊の1回の産卵数は最大280個、最小60個、平均201個(30匹平均)であつた。20雌蚊から得た200個の卵につきその大いさを測定して見ると、長径0.707-0.506mm.平均0.585mm.であり、短径0.209-0.145mm.平均0.187mm.であつた。以上のA. hyrcanus var. sinensisより得られた卵は全て基本型であり、所謂lesteri型は1例も見られなかつた。尚幼虫より羽化せしめた雌雄の成虫を上記と同様に飼育し、交尾させようとしたが遂に1度も成功しなかつた。この様な雌蚊3匹が産卵したが、何れも不受精卵であり、之は受精卵より稍長径が長い傾向が見られた。上記の如くして得た卵を大型のシャーレ中に井戸水を入れたものの中に入れて孵化せしめた。孵化迄の日数は大部分が2日で、1日のもの1例. 3日のものが2例あつた(1匹の雌より得た全部を1例とする)。孵化した幼虫は、引続き同じシャーレ中におき、之に藻と鰹節の削り粉を時々入れて餌とした。以後幼虫の発育を観察し、殊に脱皮の有無は双眼顕微鏡及び拡大鏡をもつて注視し、各齢期の判定に誤のないことを期した。幼虫の特徴が各齢期によつて変化する模様は次の如くである。
- 日本衛生動物学会の論文
- 1950-10-20
著者
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