アカイエカ群における有機燐剤抵抗性とエステラーゼ活性に関する研究-1-〔英文〕
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概要
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筆者は, アカイエカにおける有機燐剤抵抗性とエステラーゼ活性との関係を寒天ゲルを支持媒質とする薄層電気泳動法によつて検討しているが, 今回は, 兵庫県尼崎市七ツ松の下水溝に棲息する各種有機燐剤に抵抗性のコロニーと感受性系統(予研系)の幼虫に関する実験結果を第1報として報告する.アカイエカ幼虫のエステラーゼ活性は, β-naphthylacetateを加水分解する4本の活性泳動帯として分離することができるが, 尼崎市のダイアジノン抵抗性の個体群には, 感受性系統に比較して, E_2およびE_3泳動帯, とくにE_2泳動帯が異常に強い個体の多いことがわかつた.抵抗性の尼崎コロニーを, 実験室でさらに5世代, ダイアジノン淘汰した個体群は, 終齢幼虫の(LC)_<50>も0.46ppmから1.27ppmに発達し, 全個体が強いE_2, およびE_3泳動帯を示した.つぎに, pH-indicator法によつて, 有機酸エステル類に対する加水分解を調べたところ, 尼崎コロニーのE_2, あるいはE_3泳動帯は, phenylacetate, およびmethyl-n-butyrateをも加水分解することがわかつた.そして, 尼崎コロニーのacetylcholine chloride分解力は弱くて, 感受性系統との差異が認められないことから推して, このコロニーの抵抗性はコリンエステラーゼ活性によるものではないと思われる.これらの実験結果は, ダイアジノン抵抗性イエバエの場合とは全く異なる傾向であるが, 笠井・荻田(1965), および尾崎ら(1966)によつて発表されたマラソン抵抗性ツマグロヨコバイのメカニズムによく似ているのは興味深い.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1970-04-30