アカイエカ群の諸形質に関する遺伝学的検討 : (III) 無吸血産卵系と吸血産卵系との交雑系にみられる卵のふ化率, 幼虫の色発現形質と無吸血産卵に関する研究
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概要
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4令幼虫期にgreen色を呈し, autogeny形質を有するCulex pipiens molestusのGr系と, anautogenyのpallens型のKa系との正逆交雑を実験室内でおこない, 次のような結果を得た.1.この両系の雌雄のかけ合わせによつてえたF_1の卵は, ふ化率が極めて低く, Gr♀×Ka♂の場合には0.1%にすぎず, 36.8%は胎死卵(卵内に幼虫が完成してもふ化しないもの), 63.1%は未熟卵(不受精卵と推定される)であつた.Ka♀×Gr♂の場合のF_1は, ふ化卵1.8%, 胎死卵53.1%, 未熟卵45.1%であつた.これら少数のF_1個体から成虫を育て, さらにF_2卵を作らせたところ, このふ化率は, Gr♀×Ka♂の場合50.0%, Ka♀×Gr♂の場合87.3%と高率を示した.2.幼虫の色形質発現については, F_1ではすべてGrを示し, F_2ではKa♀×Gr♂の場合, Gr(Gr系の幼虫の色)20.6%, Wd(Ka系の幼虫の色)19.0%, In(GrとWdの混合色)60.4%に分離した.このことからGrという形質が単純な優性ではなく, 多形質遺伝子によるものと推定された.3.Parentの代のGr系はすべてautogenyであり, Ka系はすべてautogenyであつたが, その間の雑種におけるautogenyの出現率は非常に低く, 平均してF_1では6.7%, F_2では3.8%であつた.Autogenyの発現と幼虫の色の発現との間に関連は認められなかつた.
- 日本衛生動物学会の論文
- 1965-12-30