タイ国カンチャナブリ省山麓地帯渓谷でのマラリアの疫学的研究と種々トラップ法による媒介ハマダラカ捕獲の試み
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
タイ国カンチャナブリ省, 山麓渓谷に沿う山村マラリア流行地タ・ラム・ヤイ村において, 媒介蚊の消長と, マラリア原虫検出状況を検討し, また, ヒトや動物をおとりにした吸血採集法と羽音による音響捕獲法との有効性を比較検討した。吸血採集では, 水牛をおとりにした場合に最も多くのハマダラカ類が採れ, 16種に及んだ。ヒトを吸血したのはそのうちの2種で, An. minimusは水牛の場合のほぼ1/4,An. maculatusは1/3が採集され, その他の動物では同じくこれら2種が採れたが, 数ははるかに少なかった。このことからヒトのマラリアの媒介蚊はこれら2種が主役をなし, おもに水牛を吸血して繁殖しているものと推測された。経産蚊率は両種とも高くminimusは9月の0.5が最低, 5月の0.9が最高, maculatusは10月の0.43が最低, 3月の0.74が最高という値を示し, マラリアの高度安定流行に関与しているとみられた。これら2種は音響トラップに著明に応答し, ドライアイスとハムスターを併用した場合に, 捕獲が促進された。しかもヒト吸血の3倍を捕獲し年間の消長のモニタリングに, ヒトおとり吸血に代わり有用と思われた。なお, 種群内に異なった振動数に応答するものがみられ, minimus群では500∿600Hzに応答するものと, 800∿1,000Hzに応答する2集団が別れて捕獲された。これに対しmaculatus群では, 各振動数の音響に一様にそれぞれ応答する雌ハマダラカを採集した。このことは遺伝的分化との関連を示唆するものと考えられた。
- 1989-09-15
著者
-
Leemingsawat Somjai
Department Of Medical Zoology St. Marianna University:(present Address)department Of Medical Entomol
-
Leemingsawat Somjai
Department Of Medical Entomology Faculty Of Tropical Medicine Mahidol University