東京の市街地と近郊のハエ群集の生態学的研究
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概要
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市街地で腐肉に誘引されるハエ群集の特徴を調べるために, 東京の市街地と近郊で, 1990-1992年の3年間, 毎月1回ベイト・トラップを使ってハエを採集し, その結果を比較した。トラップは環境の異なる8か所に設置し, 3年間で24科, 179種, 18,754個体の環縫亜目のハエが採集された。8か所のハエ群集について, Piankaのα指数を用いて計算した類似度をもとにして群分析を行った結果, ハエの生息環境は森林, 草地, 住宅地, ビジネス街の4つの型に分けられた。また, おのおのの調査地点で採集されたハエの85%を占める種を優占種として, 合計47種の優占種を選び, その優占種の8地点での採集状況を比較した。その結果, 47種のハエは4つの型の生息環境に対応する4つのグループと森林と草地で同じように採集されたハエの合計5つのグループに分けられた。さらに5つのグループは都市における採集状況から, 森林も含めて都市ではほとんど採集されなかったハエ, ビジネス街や緑の少ない住宅地ではほとんど採集されなかったハエ, 住宅地やビジネス街で普通に採集されたハエの3つのサブグループに分けられた。ビジネス街のハエ群集は個体数が極めて少なく, 種数も少ないが, 平均多様度が大きいのが特徴で, 優占種はノミバエ科の1種Megaselia sp. 1とM. sp. 2,ヒョウモンショウジョウバエ, チャバネトゲハネバエ, ゲンロクニクバエ, ナミニクバエ, ケブカクロバエ, ホホアカクロバエであった。住宅地のハエ群集は, 特に緑の少ない地域では個体数, 種数ともに少なく, 平均多様度も小さいのが特徴で, 優占種はノミバエ科の1種Megaselia sp. 1,チャバネトゲハネバエ, ゲンロクニクバエ, ナミニクバエであった。緑の多い住宅地では個体数, 種数ともに増加し, 平均多様度も大きくなった。上記4種の優占種の他にクロツヤショウジョウバエ, ヒメクロバエ, キモグリバエ科の1種Siphunculina aeneaも多かった。
- 1996-06-15
著者
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