EBMと脳神経外科医との相関 : 特殊技術習得とEBMの関係(<特集>外科治療における無作為臨床試験と医療倫理)
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概要
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「医師は病気を診るが, 病人を診ない」という患者サイドからの声は, 「EBM」の正当性を疑わせる.脳神経外科医的医療行為は, 習得に長期間を要し, 確立された手術手技ですら, すべての外科医が等しい結果を得ることはない.また, 一つの手術が数人の執刀医によって継続されることはほとんどなく, 術後管理もチーム医療であって, これを一定にすることは不可能である.私は, EBMではなくむしろ, "individual-based medicine(IBM)またはnarrative-based medicine(NBM)"こそ, 21世紀における「手作りの医療」ではないかと思っている.これまでわが国では, 「和魂漢才/和魂洋才」という標語が示すように, 外国から知能・技術は輸入するが, 魂は自国のものという「輸入概念の文化的翻訳=意訳」をやってきた.現在では進歩の迅速性, さらに功利主義的オリエンテーションが優先し, 輸入概念は無作為的に直訳の状態で日常生活に登場する「無魂洋才の国」となっている.時間的, 空間的に世界は一つとなったが, 地域文化の喪失はきわめて危険である.わが国の文化的背景にマッチした, 望ましい帰化医療を考えねばならない.
- 日本脳神経外科コングレスの論文
- 2001-09-20