わが国知識労働者の分布状況と知識創造の場としての都市に関する一考察
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概要
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大学・院卒業者と専門的・技術的職業従事者のデータを用い,わが国の知識労働者の分布状況を調べると,市区町村レベルの集中度合では,武蔵野・文京・国分寺・麻生(川崎)・小金井・青葉(横浜)・鎌倉・国立・渋谷・杉並・多摩(川崎)が上位を占める。集積のウェイトも考慮すると,世田谷・練馬・大田や,岡山・奈良・熊本などの地方中核都市が上位に加わる。わが国の知識労働者は,主に近郊の都市・交通利便性の高く生活環境のよい都市に自然集積している。そこでは全般的に所得が高い。多様性への寛容度も相応に認められる。知識労働者の生活の場は郊外化しているが,知識創造には対面の対話が重要なため,職場は都心部の本社などが中心である。知識労働者は毎日長時間と多大な労力を通勤に費やしている。知識労働者の集まる近郊都市において,仕事と生活・文化を融合し,生活の場の創造力を誘発すれば,身近なイノベーションが可能となる。大都市中心部に住機能を整備して再利用し,文化的刺激のなか職住近接の環境を整えれば,知識労働者が時間を有効活用できる。地方中核都市は,多様な人材を活用することにより,人材難を緩和できる。知識労働者は,充実した仕事と快適な生活を求める人々である。多様な都市が,高質の生活環境を用意し,多様な知識労働者を惹きつければ,その相互作用により,自都市の,ひいては国全体の競争力を維持することができるだろう。
- 2004-12-24