科学者の「発表」行動をめぐる研究環境とメディア環境 : 北欧4カ国のケース・スタディから
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概要
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科学と社会との関わりの理解を深めるために、本論文では科学者の発表行動に中心を据える。科学者は2種類の発表行動をしていると捉えることができる。一つは科学論文の発表であり、もう一つは「啓蒙」活動などと呼ばれる専門家以外への発表である。前者を専門家集団内に向けたものとして理解してインパブリッシュ、後者を専門家集団外に向けたものと捉えてアウトパブリッシュと呼ぶ。ついで科学者は研究環境から資源を取り入れて生産した科学知識・情報をメディア環境を通じて外界に送り出していると捉える。この理論的枠組を北欧4カ国に適用し、科学者の置かれた2種類の環境を明らかにして科学者のアウトパプリッシュに影響を及ぼす要因を考察する。この地域を対象としたのは日本との比較を考えたとき、周縁性という共通項があると考えたからである。北欧における研究環境、メディア環境を見ると、そこには基調として小国性があり、環境の性格を規定している。一方、この地域を特徴づける北欧協力が一国では得られない研究環境を科学者に与えている。また、マーケットのサイズが限定するメディアの働きをこの地域のもう一つの特徴、地についた民主主義が補完していることが分かる。全体としてアウトパブリッシュに向かわせる力は強くないが、科学研究の「周縁」にある科学者はみずから研究を確保・発展させるためにアウトパプリッシュへの圧力を受けていることが見えてくる。
- 研究・技術計画学会の論文
- 1991-12-25