日本産トウヒレン属数種の核型
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概要
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トウヒレン属トウヒレン節の8種2亜種について核型分析を行った.(1) 染色体数はすべて 2n=23 であった.しかし,シラネアザミ (白根山産 2 株,美ヶ原産 1 株) およびセンダイトウヒレン (不忘山 1 株) に B 染色体が観察された.B 染色体は個体および核板によってその数が異なり,2〜12本観察された.(2) 核型分析の結果,染色体の大きさは最大が約 5μ,最小が約 2μであった.大型の 2 対 (第 1〜2 染色体) と小型の 2〜3対 (第11〜13染色体) は区別し得たが,残りの中位の染色体は連続的で識別がやや困難であった.(3) 第 1 染色体が median 型であり,第 2 染色体が submedian 型であること,および第13染色体が terminal 型であることは今回分析したどの種の核型にも共通している.(4) しかし,第 3〜12染色体については median 型,submedian 型,subterminal 型,terminal 型の10対における構成比が種によって異なっている.median 型を 4 対もつものはコウシュウヒゴタイで,submedian 型を 3 対もつものはキクアザミとホクチアザミ,subterminal 型を 5 対もつのはヤハズヒゴタイで,tereminal 型を 6 対もつのはセンダイトウヒレンである.またsatellite chromosomes はオオダイトウヒレン,センダイトウヒレン,アサマヒゴタイ,セイタカトウヒレンに 1 対ずつ,キクアザミ,コウシュウヒゴタイに 2 対観察された.(5) (3) と (4) から判断すると,ホクチアザミとキクアザミの核型,およびタカオヒゴタイとアサマヒゴタイの核型がよく似ており,オオダイトウヒレンとセンダイトウヒレンの核型や,オオダイトウヒレンとアサマヒゴタイの核型はむしろやや異なっていると言える.(6) コウシュウヒゴタイは median 型染色体が多く,外部形態と同様,核型の点でも多種と可成り異なっている.またセイタカトウヒレンは外部形態に特殊性があるが,核型は第 2 染色体が suberminal に近いことを除いて著しい特性は認められない.
- 1977-04-30