琉球の石垣島から獲られたモクズガニの鉗脚の毛褥上の硅藻
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概要
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琉球の石垣島の米原海岸で獲られたモクズガミ(Eriocheir japonicus)の鉗脚のブラシ状の毛褥の上に着生した硅藻群集を調べることによって,石垣島の硅藻フロラの特性を明らかにしょうとしたものである。群集は27属69種類のものから成り,その内わけは熱帯ないし亜熱帯産のもの22種類,温帯産のもの6種類,寒帯産のもの1種類,世界広域分布種(広分布種)は約40種である。広分布種を除けば,石垣島の硅藻フロラは熱帯ないし亜熱帯の特質を表していることが明瞭になる。そのことは特に熱帯産として顕著なSurirella reniformis, Triceratium dubium, Podocystis spathulata, Synedra formosaなどの出現(存在)によって裏打ちされている。69種類中,種数を多く擁している属は,Mastogloia(10),Nitzschia(10),Amphora(7)などである。群集構成種の大部分のもの(約50種類)は海産種であるが,なお約20種類の汽水産種ないし淡水産種を含む。これはモクズガミが河口附近の汽水域に主として棲息しているが,川の中流の淡水域から海岸の鹹水域までの間を匍匐移動する性質があるからである。
- 日本植物分類学会の論文
- 1990-09-25