ヒマラヤ産スズメノカタビラ属の3新種
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概要
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ネパールヒマラヤの高山に固有なスズメノカタビラ属の3新種を記載した。これら3種はともに小穂が貫生(proliferate)である。1)Poa Haraeは,P. Kanaiiと近縁である。しかしP. Kanaiiとは,根茎を持つことで区別できる。一方,P. Haraeは,匍匐茎を持っている。P. Haraeの最下の花序枝は2-5あり,粗渋である。P. Kanaiiでは平滑かわずかに粗渋である。2)P. Kanaiiは,P. pagophila BORに近縁である。P. Kanaiiの葯の長さは1.2-1.8であり,下部の花序枝は斜上する。一方,P. pagophilaでは,葯の長さは2-3mmであり,下部の花序枝は開出するかまたは反曲する。P. pagophilaでは,貫生した小穂は記録されていない。3)P. mustangensisは,P.poophagorum BORと近縁である。しかし,P. mustangensisは,最下の外穎の長さは3.5-4.5mmで,外穎の中脈は明瞭であることで区別できる。一方,P. poophagorumでは最下の外穎の長さは,2.5-3.2mmで,中脈は不明瞭である。また,P. mustangensisの稈は粗渋であるが,P. poophagorumの稈は平滑であるか,稀に花序の下部が粗渋となる。さらに,P. mustangenssisの葉舌の裏面には下向きの刺があるのに対し,P. poophagorumの葉舌の裏面は平滑であるかごくまばらに上向きの刺がある。P. poophagorumでは,貫生した小穂は記録されていない。イネ科の他の属と同様にスズメノカタビラ属では外穎がleafy shootになっている。スズメカタビラ属の貫生した小穂についてこれまでの知見をまとめ,若干の私見を述べた。
- 日本植物分類学会の論文
- 1988-06-25