邦産フクジュソウ属植物の分化IV.花の形質
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概要
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邦産の野生のフクジュソウの花の形質に関しては, この20年間に二, 三の研究者が倍数体間での花弁・萼片比の相違, 倍数体間での一茎あたりの着花数の変化について報告しているが, 花の各形質についての詳しい分析はなされていない。筆者は岩手県に産する野生のフクジュソウを材料にして, 現在「植物体各部の形質は, 倍数体の間ではどのように異なっているのか?」を主要課題として分析を進めている。今回は, (1)花の形質は二, 三および四倍体の間でどのように異なるか, (2)群落内での個体の相対的古さと花茎あたりの花の数との間には, どのような関係があるか, (3)花茎あたりの花の数は倍数体の間でどのように変化するか, の3つの問題について検討して以下のような結果を得た。(1)花の形質は倍数性の変化との相関の程度によって3つのグループに分けられるが, 倍数性の変化と最も高い相関がみられるのは萼片の長さとその数で, 次は花糸の長さである。従って, 花弁・萼片の長さの比, 萼片の数, 花糸の長さを夫々軸にして三次元グラフにまとめると, 二, 四倍体は明確に異なる分布となる。三倍体は両者の中間で, やや四倍体寄りに分布する。数量化の難しい特徴のうち, 萼片の背軸面の色と萼片の形態等も倍数体の間で違っている。(2)二倍体と四倍体のいずれの場合でも, 群落内での個体の相対的古さと一茎あたりの花の数との間には明確な関係はみられない。(3)野外に自生する5317個体について調べたところ, 一茎あたりの花の数は二倍体では2〜4個, 四倍体では1〜2個である場合が最も多い。しかし, 二倍体の群落でも10〜20%の割合で1茎あたり1花の個体がみられるし, 四倍体の群落でも約10%の割合で1茎あたり3花以上の個体があらわれる。三倍体は二倍体と似た傾向を示している。
- 日本植物分類学会の論文
- 1995-07-28
著者
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