タイ国産ニワトコ属・ガマズミ属
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概要
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私は日本の秋の野山を思わせる乾季のタイ国を約3ヶ月にわたって調査する機会を得,野外での興味ある観察ができた.我々の集めた資料とタイ国林野庁の標本庫に保存されたいる標本をもとに,CRAIB 以後研究されないまま残されているタイ国産ニワトコ属とガマズミ属の簡単な検討を試みた.本報の植物と関係のあるものついて要約しておこう.ソクズには赤系統の果実をつけるものと黒紫系統の果実をつけるものとが知られている.これら両系統の分布域は明瞭に分かれているので,本邦産のソクズの学名を Sambucus javanica subsp. chinensis とした.タイ国産のソクズ subsp. javanica は,本邦産のものに比し丈が高く,よく分枝している.また,赤系統の果実をつける亜種 subsp. chinensis は,さらに花序の腺体が盃状のソクズと細長く短筒状をなす台湾ソクズとの2変種に分けられる.台湾ではこの稜変種が見られ,高度による住み分けがあるらしく,1000 m 以上の地域にはスクズが 1000 m 以下の地域には台湾ソクズが生ずる.中井猛之進の指提以来,本邦産サンゴジュの学名として Viburnum awabucki がつかわれている.しかし,KERN の研究でも明らかなようにタイ国・中国南部・フィリツピン等に生ずる V. odoratissimum と同一の種である.それ故,本邦産のサンゴジュに使われていた V. awabucki を V. odoratissimum の異名とする KERN の見解を採用した.
- 日本植物分類学会の論文
- 1967-05-31