日本産ベニモヅク属2種の生殖器官の発達について
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概要
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1. 日本産ベニモヅク属の2種,ベニモヅクとシマベニモヅクの雌雄生殖器官の発達を観察した。2. ベニモヅクの造果器は受精後に,最初斜め縦の壁で分割される。これは H. Calvadosii と同じ方法である。3. シマベニモヅクでは受精後の造果器の最初の分割は,或ものはベニモヅクまたは H. Calvadosii における如くほぼ縦の壁で分割されるが,或ものは H. Papenfussii 及び H. densa にみられる如く,ほぼ縦の壁で分割される。これら2型の分割様式が同一個体に混在している。4. ベニモヅク及びシマベニモヅク共に,受精後に支持細胞の直ぐ上部の皮層細胞より保護糸を発出する。保護糸は2個または3個細胞に仕切られることがあるが,決して分岐しない。5. ベニモヅク及びシマベニモヅク共に,保護糸の他に,皮層糸の或ものも嚢果の支持と保護に関与する。6. ベニモヅク及びシマベニモヅク共に,造果枝細胞は融合細胞を作らない。7. ベニモヅク及びシマベニモヅクの精子形成様式は Helminthora divaricata (KYLIN 1928) と同じである。8. ベニモヅク科のうちベニモヅク属は他の属よりは Helminthora 属にもっとも近縁であると思う。稿を終るに臨み本研究中御懇切なる御指導を賜わった京大農学部米田勇一博士に,また本研究に用いたシマベニモヅクの標本を御鑑定下され,また貴重な文献を貸与下された北大理学部山田幸男博士に,更に本稿通読して種々の御助言を頂戴した神大理学部広瀬弘幸博士に深甚なる感謝の意を表します。なお研究材料の一部を採集して下された京大理学部瀬戸臨界実験所山本虎夫氏に厚く御礼申し上げます。
- 日本植物分類学会の論文
- 1960-08-15