花色変異の分子機構 : アントシアニン合成系の進化
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概要
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植物の多様な花色や着色パターンがどのように調節されているかを,アントシアニン系色素を中心に,キンギョソウ,ペチュニア,トウモロコシなどの研究例から概説した。キンギョソウやトウモロコシはゲノム内にトランスポゾンを有するために多くの突然変異系統があり,アントシアニン合成系についても遺伝学的知見の蓄積があった。また分子生物学的解析により構造遺伝子ならびに制御遺伝子からなるアントシアニン合成系の発現制御についても解明されつつある。本稿ではトランスポゾンの構造上の特徴にも言及し,その挿入や切り出しによって斑入りを生じる易変性変異や花色発現パターンの変異が創出される分子機構を紹介した。またアントシアニン合成系の進化を考える上で一つの可能性として,構造遺伝子における遺伝子重複と構造変異,ならびに新たな制御因子による発現調節機構の獲得があることを示した。これまでの研究はキンギョソウ,ペチュニア,トウモロコシなど一部のモデル植物が中心であったが,分子生物学的手法の進歩と簡便化に伴い,今後はより広範な植物で構造遺伝子や制御因子の解析がすすみ,アントシアニン合成系の進化の全体像が明らかになると考える。
- 1999-02-28
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