2,4,5-トリクロロフェノキシ酢酸の人体内における運命
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概要
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除草剤2,4,5-トリクロロフェノキ酢酸(2,4,5-T)のヒトの体内における運命を知る目的で,これを経口的に投与し,血中濃度の推移,尿中排泄量を検討した. 生体試料中の2,4,5-Tの抽出定量にはNielsenらの方法を改良し,濃硫酸下における2,4,5-Tとクロモトロープ酸との呈色反応を利用して定量した. 成人男子に150mgの2,4,5-Tを投与すると,すみやかに血漿中の濃度は高まり,投与後4時間で最高値21.1μg/mlに達し,以後緩慢に低下した.血漿からの消失速度は一次であり,生物学的半減期は11時間と計算された. 尿中より抽出した物質を次の三つの方法で検討した結果,2,4,5-Tはヒトの体内において分解および抱合等の質的変化をうけずに尿中に排泄されてくることがわかった. 1) 濃硫酸下においてクロモトロープ酸と反応し特有なブドー酒色に呈色した. 3) 抽出物のクロロホルム溶液が紫外部において最高の吸収を示す点は288mμにあり標準品のそれと一致した. 3) 抽出物を三弗下硼素でメチルエステルとしてからガスクロマトグラフィーで検討した結果,保持時間は約8分であり標準品のそれと一致した. 成人男子2名に100mgの2,4,5-Tを経口投与し,72時間にわたって採尿し尿中に排泄された2,4,5-Tを定量した.投与後24時間で投与量の約45%,48時間で約75%,72時間で80%以上が排泄された.これを実験動物における文献成績と比較すると,ヒトの場合には排泄により長時間を要するといえる. これらの知見に基づいて産業現場で2,4,5-Tの体内侵入量を推定するための一段階として,ある化学肥料工場作業者の24時間尿について尿中2,4,5-Tを測定した。作業場環境中の2,4,5-Tの濃度は0.62mg/m^3∼15.4mg/m^3であり,測定した延21名中最高値は3.6mg/dayであった.また約半数の尿中ではこの方法によって2,4,5-Tを検出することができなかった.
- 1970-10-20
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