弗素樹脂の熱分解毒性に関する研究
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概要
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弗素樹脂は,耐熱性,耐化学薬品性などに,他の樹脂にないすぐれた特性があり,現在,工業用としても,広く使用されている.しかし,耐熱性のゆえに過度の温度条件で使用される可能性も多く,熱分解毒性が注目されているが,その毒性機構については,種々論議されながらも一致した結論がえられていない.著者は,三種類の弗素樹脂につき,同一条件で熱分解を行ない,その主要な毒性因子を解明し,産業医学上,弗素樹脂取扱作業者の安全基準設定の資料とするため,本研究を行なった. 方法としては,弗化水素,単量体など,樹脂加熱分解時に生成される成分の,純粋ガスの毒性を正確に評価できるガス暴露方法を確立し,これを究明したのち,実際の樹脂加熱分解ガスの毒性を検討した. 四弗化エチレン重合体については,弗化水素が主な致死因子となり,これは,呼吸器系のみならず,肝に対してもかなりの毒性を有するが,なお,こにれ以外も,弗化水素成分に対し1/(15)程度の同傾向の毒性で作用する,第二の致死因子の存在を認めた. 四弗化エチレン,六弗化プロピレン共重合体については,同様に弗化水素が重要死因となるが,同時に,肺,肝に対し強毒性を有するオクトフルオロイソブチレンおよび同傾向の毒性を有する未知因子が混在し,これらが,第二の死因となることを観察した. 三弗化一塩化エチレン重合体においては,弗化水素および肺,肝,腎に対して毒性を有する二種類の未知因子が同時に存在し,これらが総合的に作用することを認めた, 以上により,弗素樹脂の熱分解に関して,従来論議されてきた,弗化水素,オクトフルオロイソブチレンなどに加えて,新たに未知の因子の存在も認められるので,加熱時におけるその取扱いには十分の注意が要求されるとともに,この未知成分の解明が必要なものと考えられる.
- 社団法人日本産業衛生学会の論文
- 1970-05-20