I-1 東アジアにおけるPFIの功罪
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
中国並びに東アジアのタイ通貨危機に至るまでの急成長は『世界の成長センター』として、国際経済の持続的な発展を担うものとして過大な期待と役割を果たしてきた。東アジアの急成長は過去の発展途上国の経済発展のパターンとスピードに革命を齏したかに見えた。その発展は外国資本による輸出産業の移植に負うところが大きく、外資ならびに民族資本の更なる投資と成長のボトルネックとしてインフラサービス、特に電力の需給ギャップが顕在化するに至った。途上国政府の財政にも国際機関・先進国の援助余力にも限界があるなか、所謂『民活インフラ』としてPFI (Private Financial Initiative) が脚光を集め、特に93年の世銀報告『東アジアの奇跡』は、この流れを決定づけたといってよい。現在、ビジネスの現場では多くの既存・仕掛かりPFI案件が挫折し或は条件再交渉を迫られている。既存国有資産の『民営化』からスタートしたラテンアメリカの『民活インフラ』と異なり、東アジアのPFIは産業需要に促されて国民経済が負担可能な電力料などインフラタリフと乖離した料金設定が外貨建で設定された新増設のケースがほとんどで『民活による効果』の指標としての "Value for Money" の規準に照らしても従来の公共事業としてのインフラコストより高いものが多い。筆者は予て東アジアの急成長を "Accelerated Growth" と名付けてきたが、アクセルを踏んだのは国際経済の持続的発展の為に『成長センター』を必要とした先進諸国であり、東アジアはその流れに巧く乗って急成長したという反面と、そのツケを否応なく払わされたという両面をもつように思われる。それらの点を主に外資による電力事業 (IPP Independent Power Producer)に例をとり概観し、出来れば今後の可能性をPFIからPPP (Private Public Partnership)へという流れの中に求めてみたい。
- 1999-09-10