粘土鉱物によるメチレンブルー吸着
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概要
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カオリナイトおよびモンモリロナイトによるMB吸着は,上澄液のMB濃度があまり高くない範囲において比較的一定の吸着量を示すが,試料の前処理によって吸着量が異り,Na粘土ではH(Al)-粘土より吸着量が大である。そしてNa-粘土のMB吸着量>CEC>H(Al)-粘土のMB吸着という関係がみられる。この現象はモンモリロナイトで著しく,H(Al)-粘土のMB吸着はNa-粘土のそれの60%にすぎない。このことは前者では層間にMBが1層しか入らず,後者では2層入ると考えることによって,或は吸着MB分子のOrientationの変化によって,一応説明することができる。いずれの場合にもMBはカチオン交換と共に別の機構恐らくはVan der Waals力によって吸着される。一方アロフュンのMB吸着はLangmuir型の吸着曲線を与え,吸着量がほぼ一定になるのは濃度の非常に高い部分においてである。MB吸現象に関する既往のデータの間にみられる矛盾の一部は上記のことから説明できると考えられる。即ち,通常得られるCEC値よりMB吸着量が大きいか小さいかは互換性カチオンの差によるものとして理解できる場合があることが示された。また,土壌のMB吸着がFreundlich型の吸着曲線を示すことは非品質物質の存在に帰せられるであろう。H(Al)-粘土とNa粘土のMB吸着量の差については確たる説明は難しいが,カオリナイトの場合でも,モンモリロナイトの場合でも,NaよりHまたはAlの方が交換しにくいことと,交換によるpHの低下等が原因として考えられる。また,H-(Al)モンモリロナイトは膨潤しにくいことが一層しか入り得ない原因と考えられる。モンモリロナイトの外表面への吸着の場合を除いて吸着MB分子は比較的広い面積を占めることが示された。モンモリロナイトの場合にも,表面積の測定値が過小になっているために外表面に吸着されたMBが小面積しか占めていないという結果が与えられたものと考えられる。これらのことはMB吸着が大体単分子層吸着であって顕著な多分子層吸着やミセル(アグリゲート)吸着はおこっていないことを示している。このことは吸着機構が大部分カチオン交換であることからも推定される。カオリナイトやモンモリロナイトではカチオン交換が直接に観察されたが,アロフェンではこのことは高温の方が吸着量が大であることから推定される。アロフェンにおけるカチオン交換は極めて弱い酸基によるものと考えられる(飯村,1996)からである。交換とともに他の機構,恐らくはVan der Waals吸着が同時に起っていることも推定される。粘土およびゼオライトとMBの反応のし方はここに示された様に極めて多様であり,試料の前処理によっても相当大きな差が出る場合がある。また,吸着量の大きさによって条件をかえないと正確な値を得難い。MBあるいはこれと同等以上の大きさのカチオン色素をあらゆる試料のCECの測定に用いることは原理的に無理であると考えられる。
- 1966-12-05
著者
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