湿潤熱帯地域の天水農業における改良作付体系技術の研究 : インドネシア、南東スラウェシ州の天水田における多毛作栽培
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概要
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アジアなどの湿潤熱帯における農業は水田における水稲栽培で食糧の安定を図っている.しかし, その多くは天水田であり, 水稲栽培は年1回の栽培に限られるため, 農民の収入はこの水稲-期作からの収入に頼らなければならない.そこでインドネシアの南東スラウェシ州で天水田における畑作物を含めた多毛作導入の検討を行なった.湿潤熱帯は周年降雨があると思われているが多少なりとも乾季と雨季が発現し, これが作付体系を決定する要素となる.特に雨季入りを正確に知ることにより多毛作を目的とする改良作付体系の策定が可能となる.しかしながら乾季と雨季の区別は半乾燥地やモンスーン地域よりも判明しにくい.そこで10年以上の降水量データを統計処理することで湿潤熱帯の気候を解明する事が出来た.降雨データを旬別に整理し, 降雨と旬間の作付けを関係づけた.この作業で旬間の平均降水量とその変動係数(CV)によって乾季, 雨季の区分が容易になり, かつ雨季においても変動係数の高い(99〜50%)不安定な雨季が12月〜2月まで続き, 変動係数の低い(50%以下)安定的な雨季が3月から6月まであることが判明した.このことにより不安定な雨季に1作目の畑作物の栽培が可能であることが判明し, 農家レベルでダイズ, 陸稲栽培を導入して成果を得た.また水稲の後作は乾季に入る前の土壌に水分が残っている状態で播種を行なうことで3作目の畑作物の栽培が可能であることが, トウモロコシ, ダイズの栽培試験で実証された.さらに第1作目の栽培において半乾燥地で実施した雨季直前播種(Dry sowing)技術が湿潤熱帯地域の乾季における技術として十分対応できることがトウモロコシ, リョクトウの試験で明らかとなり, この技術は雨季前作を有利にし, 三毛作導入を可能にした.
- 1999-09-01
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