多機能性薬物担体としてのシクロデキストリンの製剤への応用
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概要
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シクロデキストリン(Cyclodextrin:CyDと略称する)は19世紀後半からその存在が知られていたが, 20世紀初頭になってShardingerにより分離精製法や環状構造が明らかにされた. 1960年頃から, 酵素モデルに関する研究や構造と機能に関する研究が活発になり, わが国で応用研究が本格化したのは, 1970年代に好アルカリ性細菌由来のCyclomaltodextrin glucanotransferase(CGTase)の発見と無溶媒法の開発により結晶性CyDが大量生産されるようになってからである. 1976年に「天然食品添加物」に指定され, 食品, 化粧品, 医薬品, 医薬部外品, 臨床検査薬, 農薬, 日用雑貨, 洗剤など様々な分野で現在広く利用されている. 医薬への応用に関しては, 小野薬品工業(株)が世界に先駆けてβ-CyDを用いてプロスタグランジン製剤を実用化したのが契機になって, 1991年にα-及びβ-CyDが日本薬局方外医薬品成分規格に改質剤として収載されている. 海外では1988年イタリアでピロキシカム/β-CyD製剤が開発され, 最近, 欧米で安全性の高い水溶性のCyD誘導体が注射剤に応用された. このように, CyDは製剤設計や処方化研究において不可欠の機能性素材になっている(Table1).
- 2004-12-01