遺伝子欠損動物による薬物代謝酵素の機能解析
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
近年,多くの遺伝子欠損マウスが作製され,このマウスを用いて多くのタンパク質の生体内での機能が明らかにされている.試験管内で確認された機能が実際に生体内でどれほどの重要性で機能しているのか,遺伝子欠損マウスを用いて明らかにされるとともに全く予期されなかった機能が解明される場合もある.薬物代謝酵素に関しても多くの遺伝子欠損マウスが作製され,その機能について動物個体レベルで解析されている.薬物代謝酵素を欠損させたマウスで胎性致死となるものは報告されておらず,正常に発育する.このため,個体レベルでの医薬品等の外来異物の代謝,毒性や薬効への薬物代謝酵素の関与について多くの研究がなされている.また薬物代謝酵素は外来異物だけではなく内在性の化学物質の代謝にも関与し,生理的に重要な役割を果たしていることが欠損マウスにより明らかとなる場合もある.一方多くの薬物代謝酵素の発現に関与する核内受容体の欠損マウスも作製されている.それらの核内受容体欠損マウスは薬物代謝酵素の構成的な発現レベルや誘導応答等が野性型マウスと比べて変化しており,ある種の薬物に対する薬効や毒性の感受性が野性型マウスと比べ変化する例も多く報告されている.本総説では前者の例としてmicrosomal epoxide hydrolase (mEH)欠損マウスを用い7,12-dimethylbenz [a] anthracene (DMBA)の毒性発現機構へのmEHの関与について,可溶性画分に存在するsoluble epoxide hydrolase (sEH)とアラキドン酸代謝,血圧調節との関係について,後者の例として胆汁酸をリガンドとする核内受容体であるfarnesoid X receptor (FXR)欠損マウスを用いlithocholic acid (LCA)誘発肝障害の軽減に対するsulfotransferase (ST)の役割について,各々代謝の変動と生体の薬理学的,生理学的変化との関連について中心に紹介する.
- 社団法人日本薬学会の論文
- 2003-07-01
著者
関連論文
- 胆汁酸と代謝関連核内受容体
- 遺伝子欠損動物による薬物代謝酵素の機能解析
- P107 4-nitro-(3-trifluorometyl)anilineの変異原性(ポスターセッション)
- W3-1 4-nitro-(3-trifluorometyl)anilineの変異原性(ワークショップ(3) : 変異原とその作用機構)
- 発がん物質による標的臓器のDNA損傷におけるグレープフルーツジュース飲用の影響 : 食物成分の相互作用(第15回公開シンポジウム「食べ物によるがん予防戦略を考える : 生活環境中の植物成分の抗変異・抗発がん作用とそのメカニズム」)
- アジアトキシコロジー国際会議