複数のプロスタグランジンE_2受容体サブタイプを介する相乗的なcAMP産生機構
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概要
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プロスタグランジン(PG)E_2はシクロオキシゲナーゼとPGE合成酵素の協調作用により,膜リン脂質に由来するアラキドン酸から生成する生理活性脂質である.PGE_2は産生細胞自身やその周辺細胞の細胞膜上に存在する受容体と結合して作用を発揮するオータコイドの一種である.PGE_2受容体は,選択的なアゴニストやアンタゴニストを用いた薬理学的研究及びPGE受容体サブタイプの遺伝子クローニングの結果から,4種類のサブタイプから構成されており,それらはEPl,EP2,EP3,EP4と名称されている.発現細胞系を用いた解析により,EPlは未同定のG蛋白と共役し細胞内Ca^<2+>レベルの上昇,EP2とEP4はGs蛋白質と共役して細胞内cAMPレベルの上昇,EP3はGi蛋白質と共役して細胞内cAMPレベルの減少,それぞれを惹起することが明らかにされている.しかしながら,これら単一サブタイプ発現細胞を用いた解析だけでは,必ずしも生体内における細胞の受容体-情報伝達系の実際の様子を反映しているかは不明である.例えば,EP2あるいはEP4の選択的アゴニストによるcAMPレベルの上昇は,PGE_2による作用よりもはるかに弱いことが知られている.これは,同一細胞に複数のPGE_2受容体サブタイプが発現しているため,サブタイプ受容体間で何らかの相互作用が起きているためと想定されているが,複数のPGE_2受容体を介した情報伝達経路の詳細な解析はこれまでなされていない.肥満細胞を始めとする多くの血球系細胞は,同一細胞内に複数のEPサブタイプを発現しているため,単一のEPサブタイプの解析から得られた知見を基に細胞内情報伝達を解析するだけでは十分でなく,サブタイプ受容体間の相互作用の解明が必要である.そこで本稿において,複数のPGE_2受容体を介する細胞内情報伝達系の相互作用に関して,癌化肥満細胞におけるEP4とEP3サブタイプ受容体の協調作用による細胞内cAMP産生の調節機構とそれによるマトリックスへの細胞接着についての研究成果を紹介する.
- 公益社団法人日本薬学会の論文
- 2003-10-01
著者
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