ジュッポンオナシカワゲラの生活史
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概要
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長野県飯山市産のジュッポンオナシカワゲラAmphinemura decemceta Okamotoの生活史について野外および室内飼育観察の結果を報告した。1. 卵は無色で楕円形, その周囲は寒天質の薄膜でおおわれている。卵殼の長径は150∿170μ, 短径は120∿130μである。卵1個の重さはアルコール標本で0.0015mgである。2. 1齢幼虫の触角は9節, 尾毛は4節よりなり, 前胸下面に糸状鰓がない。1齢幼虫の体長は486∿639μ, 触角は297∿333μ, 尾毛は180∿216μである。3. 成虫の体長は雌5.5∿7.5mm, 雄5.5∿6.5mm, 前翅長は雌8.0∿8.5mm, 雄6.5∿7.0mmである。成虫1個体の体重はアルコール標本で雌4.0mg, 雄は2.2mgである。4.孵化は12月下旬∿1月下旬に行なわれ, 卵期間は月別平均水温6.3∿12.3℃の場合34∿82日, 孵化率は90∿100%である。5. 幼虫期間は月別平均水温7.5∿17.3℃の場合, 286日である。この例では幼虫の齢数は14, 各齢の期間は14∿32日である。しかし, 成長の早い個体の幼虫期間は134∿145日である。6. 1齢幼虫が成熟幼虫になるまでに体長が8倍となり, 7, 8齢虫の成長率が大きい。7. 幼虫は植食性で腐れかかった落葉や付着藻類を食する。8. 成虫の発生期は年2回で10月上旬から12月中旬までの3カ月間に大多数の個体が羽化するが, 5月に羽化する個体も若干みられる。秋に羽化の開始されるのは平均気温が18℃前後に低下した頃であり, 羽化の最盛期の平均気温は10∿16℃である。9. 258個体について性比を求めると♀100 : ♂75.5となる。10. 成虫の食性は幼虫と同じく植食性で落葉を食するが, 摂食量は少ない。11. 交尾姿態は他のカワゲラと同様である。秋に羽化した個体の産卵期は11月上旬から11月下旬で産卵数は200∿326個である。12. 成虫の生存期間は雌は2∿22日, 雄は2∿14日である。
- 1971-07-30