九州地方松穿孔虫の天敵に関する研究
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概要
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九州における重要な森林害虫の天敵, 特にキクイムシ, ゾウムシ, カミキリムシなどの甲虫類の天敵の種類と発生状況並びに数種の生態とシマサシガメの人工飼育を試みた.1)天敵の種類は, 捕食虫7種, 寄生蜂10種を発見した.このうち, 寄生蜂の8種は種名不詳である.2)このうち有力な天敵はハツトリキクイコマユバチ, Spathius sp., アリモドキカッコウムシ, Rhopalicus sp., Pteromalidae sp.及びBraconidae sp. bの6種である.3)Spathius sp.の寄生率の最高は51%, Braconidae sp. bは38%であつた.これらの天敵が生息している地方では害虫の被害は既に減少しつつある.4)クロサビカッコウムシの成虫はキイロコキクイムシの成虫を1週間に48頭, シマサシガメの成虫はマツノキクイムシの成虫を14日間に103頭, その仔虫はキイロコキクイムシの成虫を133日間に100頭を捕食した.5)シマサシガメの仔虫を初齢から代用飼料としてノシメコクガの幼虫, コクゾウ, ノコギリヒラタムシの成虫で11月15日現在迄(133日間)飼育しているがキイロコキクイムシを食物とした場合と齢期, 体の大きさにほとんど差がなく人工飼育の可能性を示唆した.本研究を行なうに当り, 九州大学農学部安松京三教授からは種々御指導を賜わつた.ここに深甚の謝意を表する.なお寄生蜂の同定をいただいた北海道大学農学部渡辺千尚教授, 上条一昭氏, 桃井節也氏に深謝の意を表する.また資料の送付について御協力下さつた各営林署及び研究に御援助を戴いた九州大学農学部平嶋義宏助教授並びに昆虫学教室の各位に厚くお礼申し上げる.
- 1962-03-31