女性看護職の抑うつに対する婚姻状態の影響
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概要
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労働者の多くはストレスを感じながら仕事を継続している.仕事の継続には心身の健康維持が必要であり, 仕事と個人生活の調和が産業保健の重要な課題である.看護職の多くは女性であるが, 仕事と家庭の多重役割がストレス反応に及ぼす影響に関して先行研究では関連性が明らかではない.職業性ストレスの研究では, 仕事のストレッサーからストレス反応が引き起こされる過程に, 仕事外の要因, 個人要因, 緩衝要因の影響が提案されている.このモデルを参考にして, 女性看護職の抑うつに対する婚姻状態の影響を検討するため, 総合病院に勤務する看護職946名を対象に質問紙調査を行い, 787名から有効回答を得た(有効回答率83.2%).得られた回答は, X^2検定, t検定および共分散分析を用いて関連性の検討を行った.対象者の平均年齢は34.8±10.3歳で, 婚姻状態は未婚者が45.9%, 既婚者が54.1%であった.抑うつはSDS自己評価式抑うつ性尺度の得点を用いたが, 抑うつ水準による区分で抑うつ状態と分類される者が72.2%であった.今回対象の看護職では抑うつを示したものが多かったが, 先行研究と同様の結果であった.個人特性では, 未婚者と若年者に抑うつが高かった.婚姻状態と抑うつの関連は, 看護職全体で未婚者に比べて既婚者の抑うつが有意に低かった.抑うつと婚姻状態の関連性で年齢が交絡因子となる可能性があるため, 共分散分析を行った結果においても, 抑うつと婚姻状態では既婚者で抑うつが有意に低かった(p<0.001).さらに20, 30歳代だけでも既婚者は抑うつが有意に低かった(p=0.001).婚姻には家族や家庭生活による安らぎや喜びなどのプラス面と圧迫感や苦痛などのマイナス面があり, 抑うつに影響する可能性があるが, 総合的には看護職の抑うつの軽減に有効であることが推察された.以上の結果は, 婚姻が看護職の精神健康に肯定的に働く可能性を示唆しており, 精神健康度を高めることが期待できる婚姻を阻害しない対策が必要だと考えられる.
- 山口大学医学会の論文
- 2005-12-31
著者
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