生後発達におけるプロテインキナーゼCの脳内分布
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概要
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プロテインキナーゼC (PKC) は中枢神経系では神経伝達のみならず,神経細胞の分化などの神経の発生過程や可塑性にも関係していることが知られてきている。今回,遺伝子レベルから分類された4つのPKC分子種α,βI,βII, γのラット脳生後発達にともなう変化を各々の分子種に特異的な抗体を用い,免疫組織化学的に検討した。また,各分子種のmRNAの変化をノーザンプロット法を用いて検討した。すべての分子種は生後発達にともない漸増するパターンを示し,βIIとγ分子種は生下時にほとんど認められず生後1-2週間で急激に増加するのに対し,αとβI分子種は生下時にすでに存在し,徐々に増加して4週間目に最大となった。mRNAの変化もβIIとγ分子種はよく似た経過を示し,α分子種とは異なっていた。免疫染色の結果,βIIとγ分子種は生後7日以後にはほぼ成熟ラットと似た脳内分布を示し,成熟ラットで高濃度に見られる部位では早い時期から免疫反応が認められた。生下時から生後3日目までは,βI分子種は外側手綱核や淡蒼球に,α分子種は尾状核被殻に多く存在し,成長にともない免疫反応は減少した。これらの部位では,αおよびβI分子種の免疫反応は神経細胞の細胞体から樹状突起の細胞膜に沿って存在し,また,成長円錐(growth cone)にも認められた。これらの結果から,PKCの各分子種は,発生過程ではそれぞれ異なった機能を持つことが示唆された。
- 神戸大学の論文