僧帽弁通過に及ぼす心拍数の影響 : 超音波パルス・ドプラ法による評価
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概要
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超音波パルス・ドプラ法によって非侵襲的な左心室拡張期充満動態の評価が可能になってきたが, ドプラ法により得られた指標に及ぼす心拍数の影響に対しては殆ど注目されていない。我々は29例の虚血性心疾患患者を対象として,超音波パルス・ドプラ法を用いて弁尖での僧帽弁通過血流速度を(1)心房ぺーシング時(2)心房心室順次ベーシング時及び(3)イソプロテレノール投与時にそれぞれ心拍数60から100/分まで10心拍毎に記録した。僧帽弁通過血流速度パターンより急速流入期最大血流速度(R),心房収縮期最大速度(A)及びAのRに対する比(A/R)を求めた。心拍数が増加すると心房ぺーシング時並びに心房心室順次ぺーシング時共にRは減少したが,イソプロテレノール投与時にはRは変化しなかった。Aはぺーシング時とイソプロテレノール投与時の何れの場合にも,急速流入波形と心房収縮期充満波形が心拍数の増加と共に重合して来ると増加した。さらに心房ぺーシング時には心拍数が増加すると房室伝導時間が延長し心房心室順次ぺーシング時に比し急激にAは増加した。結果として,A/Rは心拍数の増加と共に徐々に増加した。乙のようにR,A及びA/Rはぺーシシグ時とイソプロテレノール投与時の何れの場合にも,心拍数の変化と共に変動することが見出された。以上より,超音波パルス・ドプラ法を用いての左心室拡張期充満動態の評価には,心拍数や房室伝導時間が考慮されなければならないと結論した。
- 神戸大学の論文