傾斜機能セラミックスの新展開(連載講義高機能セラミックス繊維(1))

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機能性セラミックスには,必要に応じて各種機能性を有する表面層が形成されている場合が多い.これは材料の内部と表面で要求される機能が異なっていたり,材料表面に内部を保護する機能が要求されたりするからである.一般的には,コーティングと呼ばれる"基材表面に目的とする機能を発現する物質を塗る方法"が採用されている.この場合,塗る工程と熱処理等の後処理工程が必要な上,使用環境(熱膨張率の異なる表面層と基材との界面に熱応力が集中する場合等)によっては表面層の剥がれが生じると言う問題点もあった.このような状況下で,後者の問題を回避する目的で,表面から内部に向かって組成を変化させた傾斜表面層を形成させる多くの試みがなされてきた.例えば,(1)化学気相蒸着法,(2)スリップキャスト法やドライ法のように組成の異なった粉体を順次塗布してゆく方法,(3)各種コーティング法,(4)基材表面に熱化学反応を起こさせて表面機能層を形成させる方法等が提案されている.この内,(1)と(4)の方法は,比較的コストが高く,操作が複雑で基材自体に損傷を与える可能性もある.また,(2)と(3)の方法では不連続な傾斜構造となり,それぞれの層の厚み(段階的傾斜構造単位の厚み)を100nm以下に制御することは困難である.更に,これらの方法の多くは,非常に細い繊維形状物や微細な粉末の表面層を形成させるには適していない.筆者等は,高分子材料の劣化現象の一つとして捉えられていたブリードアウト現象(低分子量物が材料表面に押し出される自然現象)をセラミックスの前駆体(グリーン体を含む)に適用して,優れた機能性表面傾斜層を有するセラミックスを合成する新しいプロセスの開発に成功した.つまり,熱処理により機能性無機材料に変換され得る低分子量物を含むセラミックス前駆体を成形後,熱処理過程に上記ブリードアウトを効果的に進行させ,そのままの状態で高温焼成することにより,低分子量添加物由来の無機質層が表面に形成された機能性セラミックスが容易に得られることを見出した.この方法により形成された表面機能層は,従来のコーティング層とは違って,表面に向かって連続的な傾斜組成を有していることから,熱サイクルや摩擦に際しても剥がれにくく非常に強固である.本稿では,傾斜表面構造を有する機能性セラミックスの新しい合成方法を説明し,その具現化例として優れた光触媒活性を示すチタニア焼結層を表面に有するセラミックス繊維や表面層がジルコニア焼結層で覆われた耐アルカリ性に優れた炭化ケイ素繊維等について紹介する.更に得られた傾斜機能セラミックスの用途展開についても詳説する.
2003-10-05

傾斜機能セラミックスの新展開(連載講義高機能セラミックス繊維(1))

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