オオニジユウヤホシテントウの食性に關する研究 : (第 4 報)成蟲及び幼蟲の温度反應について
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概要
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1. 本報ではオオニジュウヤホシテントウEpilachna vigintioctomaculata Motschulskyの温度に對する反應を3分に1℃の温度上昇下に於て, その第1化期及び越冬中成蟲(雌雄)並びに幼蟲について吟味した.2. 活動階梯の指標として微動 : 成蟲♀6.3∿7.3℃, ♂7.0∿8.0℃, 幼蟲9.7∿11.5℃;歩行開始 : 成蟲♀7.9∿8.7℃, ♂8.4∿8.8℃, 幼蟲10.5∿13.2℃;興奮 : 成蟲♀32.9∿39.5℃, ♂34.2∿38.3℃, 幼蟲28.9∿37.3℃;苦悶(幼蟲では歩行不能) : 成蟲♀42.8∿47.8℃, ♂42.0∿44.2℃;幼蟲38.4∿44.0℃;熱死 : 成蟲♀46.6∿50.4℃, ♂43.2∿48.7℃, 幼蟲42.9∿48.0℃;の5階梯を區別した.3. 第1化期成蟲は越冬中成蟲に比し活動温度範圍が狭い.4. 成蟲では雌は雄に比し生育の時期に拘らず活動温度範圍が廣い.5. 成蟲は幼蟲より活動温度範圍廣く, 且低温部に於ける活動の幅が大である.6. 温度反應から成蟲の攝食活動は10℃以下で, 幼蟲のそれは10∿15℃で開始され, いずれも30∿35℃附近に正常な攝食活動の高温限界があると推定される.7. 本成蟲の正常活動温度範圍(28℃)はイネドロオイムシLema oryzae Kuwayama(18℃), ダイズネモグリバエOphiomyia sp. (21℃), イネハモグリバエAgromyza oryzella Matsumura (19℃), ニカメイガChilo simplex Butler (25℃), イチモンジセセリParnara guttata Bremer (18℃)等に比し幅が廣く, 然も低温活動性の昆蟲であることが認められる.このことは本蟲が東亞の變温性が強く且低温な地帶に分布している事實とよく一致している.8. イネドロオイムシ, イネハモグリバエと本蟲の成蟲間の正常活動範圍相互の關係はよく似ており, 兩種の分布地帶は本蟲の分布地帶内に含まれている.3種の分布地帶上の相異點は主として活動温度範圍の廣狭に歸因するものであろう.9. 本蟲の耐熱性は成蟲は幼蟲より強く, 成蟲では雌は雄より強い.10. 同一昆蟲の雌雄間或は成蟲幼蟲間等の活動温度範圍のcombinationには13の型(活動型とよぶ)がある(Table 1).成蟲幼蟲間の正常活動型は本蟲, イネドロオイムシ及びイネハモグリバエではHLH型, ダイズネモグリバエはHLL型, イチモンジセセリはLHL型であつて, イチモンジセセリと本蟲は全く反對の活動型に屬する.
- 日本昆虫学会の論文
- 1951-12-25