肛門を有する吸蟲に就きて
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概要
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内部寄生性の寄生蟲は宿主から消化された營養物を攝取し得る便宜を持て居る爲めに、孰れも退化した消化管を得するか或は全く之を缺いて居るかである。吸蟲類に於ては消化管はあるが、そして其の分岐の模様又連結の仕方は色々であるが、其の末端が盲嚢に絡つて、不消化物は再び口を通して吐き出される構造に總てのものがなつて居る様に考へられて居つたのである。1908年LEIPERはエキノストマ科のBalfouria monogamaに於て、其の消化管の末端が排泄嚢に開いて居る事を發見して此の由を記載した。此の觀察は疑問視され、エキノストマ類の分類を大成したDIEETZ氏も之を疑つたが、ODHNER氏は(1910)同種の吸蟲に就てLEIPER氏の觀察の誤ならざる事を確かめ、更らに近似の屬Chaunocephalus ferox(RUD.)(エキノストマ科)に於て同じ現象を觀察し、1911年には分類の上から全程から離れたHaplocladus屬に於てこれと同じ構造の存在を發見して居る。後者は單一なる腸管を有する魚類寄生の吸蟲である。LEIPER及びODHNERの觀察は排泄孔が肛門を兼ね得るものを發見したのであるが、余が茲に報告する吸蟲は、消化管が排泄嚢(開口は體末端)と全く獨立に腹面に開口せるもので、眞正の肛門と稱すべきものを持つものである。蟲體の構造は大體次の通りである。分類上の位置に就きては後に述べる事にする。
- 社団法人日本動物学会の論文
- 1925-09-15