情報システムの信頼性に関する規格化についてのこれまでの活動と将来必要な活動
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概要
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昭和59年11月世田谷の電話局で発生した通信災害は、電話の不通や銀行のオンラインの停止等、様々な社会的問題を引き起こした。コンピュータシステムの障害は社会的規模で影響を与えることから、信頼性が重要な課題となっていた。それにさきがけて、通産省工業技術院は、昭和57年度より「コンピュータシステムの高信頼化技術に関する調査研究」を(財)日本情報処理開発協会に委託し、システム信頼性委員会を組織し5ヶ年計画で調査研究を進めていた。本調査研究は昭和60年度より(財)日本規格協会に引き継がれた。 一方、昭和59年12月に日本工業標準調査会情報技術標準化特別委員会は「情報技術の標準化の推進に関する建議」を取りまとめ通産大臣への建議を行い、コンピュータシステムの高信頼化技術の標準化についても推進方策を提案した。通産省工業技術院は、本建議における「コンピュータシステムの高信頼化対策技術基準(案)」をJISドラフトとして取りまとめ、(財)日本規格協会を通じて昭和60年6月米国、10月欧州に調査団を派遣し、コンピュータシステムの高信頼化技術および標準化に関係する欧米の政府機関、研究機関、企業との意見交換を行った。また、昭和60年11月、(財)日本規格協会に「コンピュータシステムの高信頼化対策技術基準」のJIS原案の作成を委託し、JIS原案作成委員会により昭和61年10月にJIS原案が取りまとめられた。通産省工業技術院は本原案に基づいて「コンピュータシステムの高信頼化技術(フォールトトレラント技術)」の ISO への新規プロジェクト提案を計画し、本分野において日本が主導権を握る意向であったが、安全性、セキュリティ、システム監査等の分野の検討が先行し、本原案は時期尚早とのことから見送りとなった。しかし、本原案は平成2年8月、(財)日本規格協会により INSTAC テクニカルレポート「コンピュータシステムの高信頼化対策指針(INSTAC TR003-1990)」として発行された。その間、昭和62年に信頼性等に関係する情報処理用語として、「ISO2382/8、14等」に準拠して「JIS X0008(規制、完全性及び安全保護)」、「JIS X0014(信頼性、保守及び可用性)」等が制定されたが、特にシステムの高信頼化技術そのものに関連する規格化の動きはなかった。最近の内外の貿易不均衡の是正、規制緩和の促進等についての強い要望から、平成7年3月「規制緩和推進計画」が策定され、日本工業標準調査会から通産大臣に提出された「今後の標準化行政のあり方について(中間報告)」の中でも JIS と国際規格との整合化が強調され、平成7年9月、通産省工業技術院は新たに「日本工業規格と国際規格との整合化の手引き」を策定し、(社)電子情報通信学会規格調査会は、平成8年6月、「TC56信頼性」に関する国際規格の見直しJISとの整合化を計る「信頼性分野の国際整合化調査研究」を受託し、「信頼性規格整合化推進委員会」を組織し、「JIS原案作成委員会」、「分野別検討小委員会」等を編成し推進している。
- 1997-08-13