野島地震断層の断層面の組織と移動方向
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概要
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断層解析において、実移動の方向と量を明らかにすることは最も重要であるが、断層形成以前に接していた2点が、断層の両側のどこにあるかを知ることは容易ではないとされている<1)>。地質調査によって断層の運動方向を判定するには、方向が異なる2つの平面(地層と岩脈等)を断層が切る場合<1)>を除けば、断層変位による食い違いを判定できる基準面と、その時に形成された断層面の条線方向を明らかにする必要がある。しかし、実際の地質調査で、これを明らかにするには多くの労力を要し、まして横ずれ断層では容易なことではなく、重要構造物の耐震設計のための活断層調査でも、このような経験をすることがある。断層運動で形成された断層面の特徴等から、断層の移動の方向を判定する研究の主なものとしては、小玉<2)>が、鉱物や柔らかい岩石の粉砕された跡が彗星のように尾を引いている場合、それから実移動の方向を認めうるときもあるとしている。また、断層面に形成された鏡肌に伴われている条線とほぼ直交して、短く鋭い延長を持った段について、この段を"下りていく"方向が、反対側の盤の移動した方向を示すとする、いわゆる「粗滑法則」については、植村<3)>が詳しく研究している。しかし、段の成因はいろいろあるので、この"法則"を機械的に適用するのは危険と垣見・加藤<1)>が指摘していることや、移動方向が明確な断層面での実例が少ないこともあってか、実際の調査において、上記の方法を用いることは少ない。兵庫県南部地震で、地表に現れた淡路島の野島地震断層<4)>には、地表面の食い違い方向と一致する明瞭な条線を伴う断層面が所々で認められた。したがって、この移動方向が明確な断層面は、断層の移動の方向とそれに適合する断層面の組織の関係を検討するのに最適と考えられる。また、この地震断層は近年まれに見る顕著なものであることから、その性状の記録は、今後の活断層調査において極めて重要と考えられる。以下に、この断層面の組織の観察結果とその成因の考察を記述する。
- 一般社団法人日本応用地質学会の論文
- 1995-12-10