ミリ波MCM
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
わが国における30GHz以上の無線局は僅か約2900局に過ぎない。そのうち約90%が50GHz帯を用いた簡易無線装置である。しかし、近年、特に1990年代に入って、日米欧その他で自動車用レーダ(47GHz、60GHz、76GHz、94GHz等)、高速無線LAN(60GHz)、MB S (40GHz、60GHz)等のミリ波装置/システムの研究・開発が活発化している。また、ミリ波帯の実用化を促進すべく、わが国では1995年10月、60GHz帯に「小電力ミリ波レーダ」が割り当てられたのを始め、米国では1995年12月に47GHz帯(自動車レーダ)、60GHz帯(無免許の通信装置)、76GHz帯(自動車レーダ)の割り当てが決定する等、各国/地域で周波数割り当ても順調に進んでいる。ところで、現在、ミリ波帯で開発されている装置は何れも市場の要求価格が従来のミリ波装置に比較して極めて低い。例えば、ICC(Intelligent Cruise Control)用レーダの要求価格は概ね車体価格の1〜2%である。また、無線LANモデムは、2.4GHzを用いた伝送レート1〜2Mbpsのものが、$600〜800で既に販売されている事から、これらと同等の価格が期待されている。従って、現在、各国/地域で精力的に開発されている各種ミリ波装置を実用化し普及させるためには、装置価格をより一層低価格化し得る技術の開発が必須と言える。さて、ミリ波装置の大量生産化・低価格化の一つの手段となりうるものとして、HEMTをベースとしたMMICが挙げられる。実際、米国では1988年からMIMICプログラムによって、日本では1991年からミリウェイブによって、そして欧州ではEuroGaAsによって精力的かつ集中的にミリ波MMICの開発が行われ、いわゆる未利用周波数帯域で様々な成果が報告されている。従って、少なくともデバイスとその周辺の受動回路はMMICという手法によって、実用化に向かって動いているように思える。このように、ミリ波帯のMMICは既にリアリティを持って議論できるようになっており、しかも、MMIC自体は学習曲線に乗ってコストが逓減していく物と一般に考えられている。しかし、一方では将来大きな市場となると一般に思われている自動車レーダにおいてさえ、未だにGunnダイオードビームリードSBD等の二端子デバイスと導波管等の立体回路によって構成された装置の発表も相次いでいる。このような状況から、システムサイドからは、MMICは本当に廉化の手段たりうるかという疑念さえ出されている。では、MMICには何が欠けているのだろうか。逆に、MMICにどんな技術を付加すれば市場の要求に合う装置をユーザに提供できるようになるのだろうか。本論では以上のような状況を踏まえ、ミリ波装置の要件やミリ波特有の問題点を考えながら、ミリ波MCMを含め、ミリ波装置全体の実装技術はどうあるべきなのかを議論したい。
- 社団法人電子情報通信学会の論文
- 1996-03-11