時間要素によるヒトの大脳皮質における視聴感覚統合作用の場所に影響
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概要
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多重感覚刺激が脳で受け取られ、統合処理され一つの事象として認知できるのは、各感覚刺激の時間及び空間関係が近接しているからである。最近、視聴感覚刺激が同期、また不同期(SOA)に呈示された場合、脳の中の統合処理をする場所が各々異なることが報告された。しかし、不同期条件で視覚聴覚刺激の呈示開始時間のズレが統合処理を行う場所に影響するかどうかについては報告されていない。この影響を解明する為に実験を行った。刺激呈示は2種類で、これをobject Aとobject Bとする。呈示された刺激の種類により、被験者は違うボタンを押して識別した事を示す反応を返す。1種類のobjectには、単独の視覚刺激と単独の聴覚刺激及び視聴覚多重刺激があり、視聴覚多重刺激の呈示開始時間のズレが、実験1では視覚刺激呈示が聴覚刺激呈示より15ミリ秒早く(SOA15)、実験2では30ミリ秒早い(SOA30)という2種類の実験を構成した。頭皮上から脳波を記録し、個々の被験者の各種類の刺激条件別に応答波形を加算平均し、さらに各被験者にわたる群加算平均事象関連電位(ERP)を求め頭皮上電位マッピングを行った。実験1による統合処理成分を実験2の場合と比較し以下の結果を得た。(1)前頭前野の同様の場所でSOA15、SOA30のどちらの条件でも視聴覚多重刺激に対しての統合処理成分をみいだした。この結果はこれらの部位のニューロンによる統合処理が呈示時点の時間的なズレに影響されないことを示している。前頭前野が視覚及び聴覚刺激の空間情報を処理することを報告した研究があり、本研究は以前の研究結果と一致していることが確認できた。(2)左後頭部にSOA15の条件で出現する統合処理成分がSOA30の条件では出現せず、逆に右後頭部ではSOA30の条件で存在する統合処理成分がSOA15の条件で出現していなかった。つまり、不同期条件での視覚聴覚刺激の呈示時間のズレが統合処理をおこなう場所の違いに影響することが示された。これらの部位にあるニューロンが、同一の対象から発生した視覚刺激と聴覚刺激の各々の受容器に到達する時間遅れを補正する効果と関係のある可能性が示唆された。
- 社団法人電子情報通信学会の論文
- 2005-01-17
著者
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