医学研究における公益と個人情報保護 : 「同意不要」の法整備は必要か?
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概要
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医療情報の活用をめぐる問題の中でも、とりわけ個人のプライバシー権と杜会的な公益とのバランスをどう確保するかが、ひとつの焦点になっている。個々人の権利よりも公益が優先される場合、医療従事者による患者のプライバシーに対する侵害行為も、時には許容されるケースがある、ということになる。しかし、患者には、自分の医療情報の活用に関する同意、不同意の選択権が保障されなくてはならない。たとえ公益が個人の権利に対して優先されるといっても、「公益」ということだけでは、個人の権利を侵害してもよい、という理由にはならない。公益が個人の権利を優越してもよいかどうかということは、両者の具体的なバランスを考察することによって決定されるべき事項である。医療情報活用に関するプライバシー・ポリシーを制定・運用するにあたっては、単にセキュリティやプライバシー保護という情報「管理」という消極的な観点のみからでは不十分である。医療情報の活用が、真に「患者中心の医療」にとって有効性を発揮するためには、医療情報に関する患者自身による自己決定・自己管理を積極的に支援する体制を整備することが不可欠である。
- 一般社団法人電子情報通信学会の論文
- 2001-11-30