幼児の牽引および推進動作に対する運動イメージ語の影響 : 認知意味論におけるイメージ図式の心理学的妥当性の検討
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概要
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発達心理学で言われていた概念形成における感覚運動スキーマの重要性について言語哲学の立場からLakoff (1987) , Johnson (1987) によって新しい洞察が加えられた。彼らは「イメージ図式」(Image scheme) と「隠喩的投射」 (metaphorical projection) という概念を用いて, 概念形成と理解の成立にとって人間の身体的経験が重要な働きをなしていることを述べている。本研究は, 5, 6歳の園児103名 (平均年齢6 ; 0) を対象とし, この2つの概念のうちイメージ図式についてその心理学的妥当性を検討することを目的とした。第1実験では, 「敢る」, 「渡す」という言葉について, 装置操作においてそれらの言葉の持つ「運動イメージ」と同方向である順図式条件と, それとは逆方向である逆図式条件で反応の正誤数を比較した。結果は「取る」, 「渡す」という言葉の違いによらず, 逆図式条件の方が正反応数が有意に少なかった。第2実験では, 言葉の持つイメージが実際の運動の学習に及ぼす影響をより明確にするため, 装置操作の学習速度を指標とし, 敢る一渡す教示条件 (運動イメージ語) とこっち教示条件 (非運動イメージ語) とを比較した。結果は, 敢る一渡す教示条件の方が学習試行数が有意に少なかった。このことは, 実際の運動と言葉の「運動イメージ」とのズレが学習手がかりとなったとも考えられ, 第1実験と合わせてイメージ図式の心理学的妥当性を高めたが, 実験方法上に問題があった可能性も否定できない。
- 1995-12-10
著者
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